図書館の蔵書を整理するとき、「古い本は何年で廃棄するのか」「利用されていない本なら処分してよいのか」と迷うことがあります。
図書は、古いという理由だけで一律に廃棄するものではありません。
内容の正確性、利用状況、破損状態、新版の有無、資料として残す価値などを確認し、図書館ごとの基準に沿って判断する必要があります。
また、学校や大学では、現物を処分する前に除籍や学内承認が必要になる場合もあります。
この記事では、図書館における図書の廃棄基準から、種類別の目安、除籍、古紙への資源化、大量廃棄の進め方まで解説します。
図書館で本を廃棄する際の基本
図書館の本を廃棄するときは、不要に見える本をその場で処分するのではなく、基準に沿って必要性を判断します。
まずは除籍との違いや、廃棄基準の考え方を確認しましょう。
除籍と廃棄は別の手続き
除籍と廃棄は同じ作業ではありません。
除籍は、蔵書として登録されている図書を図書館の管理対象から外す手続きです。
一方、廃棄は除籍した図書を古紙回収や廃棄物処理へ回し、現物を手放すことを指します。
登録情報を残したまま本だけ処分すると、蔵書点検時に管理情報との食い違いが生じます。
基本的には必要な承認を受けて除籍し、その後に現物の処分方法を決めましょう。
除籍印やバーコード、ICタグなどの扱いは自館の規程に従ってください。
古いだけでは廃棄しない
刊行年や受入年が古いだけでは、図書を廃棄する十分な理由にならない場合があります。
古い本でも、郷土資料、自校資料、絶版資料、文学作品、研究に必要な専門書などは保存価値が残っているためです。
学校図書館では、受入後10年を廃棄・更新の対象とする一つの基準がありますが、10年を過ぎれば必ず処分するという意味ではありません。
現在も利用できる内容か、再取得できるか、保存する価値があるかまで確認して判断しましょう。
廃棄基準を決めて運用する
図書の廃棄は、担当者個人の感覚ではなく、明文化した基準に沿って進めることが大切です。
「古い」「あまり借りられていない」といった判断だけでは、担当者によって結果が変わり、必要な資料まで処分するおそれがあります。
文部科学省の学校図書館資料の廃棄・更新に関する考え方でも、明文化した基準に沿って組織的・計画的に廃棄・更新することが望ましいとされています。
受入年、内容の正確性、利用状況、破損、新版の有無、保存価値などを基準として定めておくと判断しやすくなります。
図書館で本を廃棄する判断基準
図書館で廃棄・更新を検討するときは、経過年数だけでなく複数の条件を確認します。
代表的な判断基準を見ていきましょう。
受入後10年は見直しの目安
学校図書館では、学校図書館図書廃棄規準を参考に、経過年数だけでなく内容や利用価値を確認して廃棄・更新を判断します。
ただし、10年経過した時点で自動的に廃棄するものではありません。
現在も利用される文学作品や地域資料、再取得が難しい資料などは保存する必要があります。
一方、10年未満でも情報が古くなっていれば更新候補になることがあります。
年数だけでなく、現在の利用価値まで確認しましょう。
情報が古い本は更新を検討する
記載内容が現在と合わず、利用者へ誤った情報を与える可能性がある図書は、廃棄や新版への更新を検討します。
本自体がきれいでも、内容が古ければ現在の資料として適切に利用できないためです。
特に法律、科学、技術、地理、時事問題などは、情報が変化しやすい分野です。
蔵書点検では本の状態だけでなく、「現在も正しい情報として利用できるか」を確認してください。
新版がある場合は入れ替えも検討しましょう。
利用の少ない複本は整理を検討する
同じ図書を複数冊所蔵している場合、利用頻度が低い複本は、必要な冊数を残して整理できます。
授業や行事のため一時的に多く購入した本でも、時間の経過によって必要冊数が変わることがあるためです。
ただし、現在の貸出回数だけで判断するのは避けましょう。
授業指定図書や今後の行事などで利用予定がないか確認し、必要な冊数を残してください。
複本を何冊残すか基準を決めておくと、担当者が変わっても判断しやすくなります。
破損が大きい本は廃棄を検討する
破損や汚損が大きく、通常の利用が難しい図書は廃棄・更新を検討します。
ページの脱落、水濡れ、強い汚れなどによって利用できなくなった本を置き続けても、資料として十分に活用できません。
ただし、小さな破れや表紙の傷みなど、補修可能な本まで廃棄する必要はありません。
絶版本や希少資料は再取得できない可能性もあります。
修理できるか、買い直せるかも確認して判断しましょう。
新版がある旧版は更新を検討する
新版や改訂版が刊行され、旧版の内容が現在と合わなくなっている場合は更新を検討します。
法律、統計、受験、技術、地図などは、改訂によって内容が大きく変わることがあるためです。
古い版だけを書架に残すと、利用者が現在とは異なる制度や数値を参照する可能性があります。
一方、旧版自体が研究資料や歴史資料として価値を持つ場合もあります。
新版の有無だけではなく、旧版を保存する意味があるか確認してください。
所在不明本は調査後に除籍を検討する
蔵書点検をしても所在が確認できない図書は、必要な調査をしたうえで除籍を検討します。
一度見つからなかっただけで除籍すると、返却処理の漏れや配架場所の間違いによって一時的に見つからない資料まで処理する可能性があります。
書架、返却棚、教室、研究室、貸出記録などを確認しましょう。
所在不明から何年で除籍するかについて、全国一律の期間が決められているわけではありません。
自館の除籍規程や設置者のルールに従って判断してください。
図書の種類別に見る廃棄・更新の目安
図書によって情報が古くなる速度は異なります。
特に旅行、受験、法律、技術などの資料は、一般書より短い期間で内容を確認する必要があります。
旅行・受験案内は2年が目安
旅行案内書や就職・受験案内書は、比較的短期間で内容を見直したい資料です。
交通、施設、料金、学校情報、入試制度などが変化しやすいためです。
全国学校図書館協議会の種別規準では、旅行案内書と就職・受験案内書について、刊行後2年を経過し、内容が現状にそぐわなくなったものを対象としています。
2年は廃棄期限ではありません。
現在も利用できる情報かを確認するタイミングとして考えましょう。
法律・地図・技術書は3年が目安
図鑑、地図帳、法律書、時事問題関係書、学習参考書、技術書・実験書、環境問題関係書などは、刊行後3年を一つの確認時期として考えます。
法改正や研究成果、地名、教育内容、技術などの変化を受けやすいためです。
例えば、法律書なら法改正、地図帳なら地名や行政区分が現在と合っているか確認します。
3年経過を理由に機械的に廃棄せず、内容が現状にそぐわなくなっているかを基準に判断してください。
経過年数だけで廃棄を決めない
図書の廃棄は、2年・3年・10年といった経過年数だけでは決められません。
歴史書や伝記では新しい資料の発見によって評価が変わることがあり、料理や服飾の本でも技術や社会状況の変化が関係します。
利用者が最新情報を得るための本なのか、過去の記録そのものに価値がある本なのかによっても扱いは異なります。
年数はあくまで内容を見直すきっかけとし、資料ごとの利用価値と保存価値を確認しましょう。
廃棄せず残したい図書
廃棄基準に当てはまる本でも、資料価値が高いものは慎重に判断する必要があります。
一度処分すると再取得できない資料には特に注意しましょう。
郷土資料や自校資料は慎重に扱う
郷土資料や自校資料は、原則として安易に廃棄しない方がよい資料です。
地域や学校に関する資料は発行部数が少なく、処分すると同じものを再取得できない可能性があります。
学校史、周年記念誌、校内新聞、地域史、自治体史などは、現在の貸出回数が少なくても将来の調査や記録に利用できます。
自館で保存することが難しい場合は、公共図書館などへの移管も検討しましょう。
希少な研究資料は利用回数だけで捨てない
大学図書館の希少資料や専門資料は、利用回数や発行年だけで廃棄を判断しないようにしましょう。
専門書、学術雑誌のバックナンバー、過去の統計、旧版の専門資料などは、情報が古くても研究対象になる場合があります。
特に絶版資料は、処分すると再取得が難しくなります。
他大学や国立国会図書館での所蔵状況、電子版の有無なども確認すると判断材料になります。
資料価値を判断しにくい場合は、関係する教員や研究室へ確認しましょう。
大学図書館で本を廃棄する際の注意点
大学図書館では、蔵書としての価値だけでなく、学内の資産・物品管理ルールにも注意が必要です。
大量廃棄では搬出計画も事前に立てましょう。
除籍前に学内規程を確認する
大学図書館で図書を廃棄するときは、除籍基準だけでなく、物品管理や資産管理の規程も確認してください。
図書館システム上で除籍しても、法人の資産台帳などに登録が残っていれば、手続きが完了していない可能性があります。
特に研究費で購入した図書、高額資料、研究室で管理していた専門書などは注意が必要です。
資料価値を判断しにくい場合は、関係する教員や研究室にも確認してから除籍を決めましょう。
大量廃棄は搬出まで計画する
数百冊から数千冊の本を処分する場合は、除籍と搬出を分けて計画しましょう。
大量の図書は重量があり、選別、箱詰め、仮置き、運搬など多くの作業が発生します。
先に廃棄対象と除籍処理を確定し、その後「保存」「再利用」「古紙」「その他」に分けると進めやすくなります。
保管階、エレベーター、台車の使用可否、搬出経路、作業可能時間も事前に整理してください。
書架やOA機器も撤去する場合は、図書とは別に廃棄物区分を確認しましょう。
図書を廃棄する具体的な手順
図書を処分するときは、蔵書点検から除籍まで順番に進めることが大切です。
大量に廃棄する場合も、先に対象資料を確定してから搬出しましょう。
手順1.蔵書の状態を点検する
最初に、蔵書の所在、状態、利用状況を確認します。
書架を見るだけでは、利用頻度や所在不明資料、新版の有無などを正確に判断できません。
登録されている本が実際に存在するか確認し、破損、汚損、落丁、内容の古さなども見ておきましょう。
貸出履歴、複本数、新版の有無も確認すると廃棄候補を絞りやすくなります。
大量に整理する場合は、点検結果を一覧にしておくと後の承認や除籍作業も進めやすくなります。
手順2.廃棄候補を選定する
廃棄候補は、一つの条件ではなく複数の基準を組み合わせて選びましょう。
確認したいのは、受入年、内容の正確性、利用状況、複本数、新版の有無、破損状態、保存価値などです。
10年以上前の本でも利用価値があれば残し、比較的新しくても情報が誤っていれば更新を検討します。
候補を選んだ後は、郷土資料、自校資料、希少資料、研究資料などが含まれていないか再確認してください。
必要に応じて複数人で確認すると誤廃棄を防ぎやすくなります。
手順3.承認を受けて除籍する
廃棄候補を確定したら、必要な承認を受け、除籍してから現物を処分します。
学校や大学の図書は公費や法人の資金で購入されている場合があり、担当者だけでは処分できないことがあるためです。
大学では、図書館の規程だけでなく物品管理や資産管理の手続きが必要になる場合もあります。
承認後は、図書館システムの登録変更や除籍印など、自館のルールに従って処理しましょう。
後から処分の経緯を確認できるよう、記録を残しておくことも大切です。
手順4.処分方法を決める
除籍後は、再利用、古紙への資源化、廃棄などから適した方法を選びます。
状態の良い本なら、他施設への移管や譲渡を検討できる場合があります。
再利用が難しくても、紙として回収できれば古紙へ資源化できる可能性があります。
CD・DVDやプラスチック部品などが付属している場合は、図書本体とは処分方法が異なることもあります。
大量処分では、「再利用」「古紙」「その他」に分けて仮置きすると搬出しやすくなります。
除籍した図書の処分方法
除籍した図書は、状態や素材に応じて処分方法を選びます。
特に大量に処分するときは、事前に自治体や回収先の受入条件を確認しましょう。
古紙として資源化する
再利用できない図書でも、紙として回収可能なら古紙へ資源化できる場合があります。
ただし、ビニールカバー、CD・DVD、プラスチック部品などの扱いは回収先によって異なります。
大量の本から先に付属品を外した後で、分解が不要だったとわかると余計な作業が増えてしまいます。
まず回収先へ本の状態や量を伝え、どこまで分別する必要があるか確認しましょう。
複数の素材が混在する場合は、素材ごとに処理方法を確認することが大切です。
他施設へ譲渡・再利用する
内容が現在も利用でき、状態の良い除籍本は、譲渡や再利用を検討できます。
他部署や別施設で活用できれば、廃棄するより有効に利用できます。
ただし、公費で購入した図書や資産として管理されている本を、担当者の判断だけで自由に譲渡できるとは限りません。
再利用する場合も、自館や法人の規程に沿って必要な除籍・資産管理手続きを済ませてから進めましょう。
廃棄物として適切に処分する
再利用や古紙への資源化が難しい図書は、事業活動から発生した廃棄物として処理方法を確認します。
学校、大学、公共図書館などから出た本は家庭ごみではないため、家庭向けのごみ収集をそのまま利用できるとは限りません。
通常の学校・大学・図書館から排出される紙製の本は、一般的には事業系一般廃棄物として扱われます。
ただし、収集方法や古紙としての扱いは自治体によって異なります。
所在地の自治体へ、不要図書の種類と量を伝えて確認しましょう。
CD・DVDなどの付属品を分別する
CD・DVDやプラスチック製の付属品は、紙の図書本体とは分けて処理方法を確認しましょう。
CD・DVDやプラスチックケースなど、事業活動から出る廃プラスチック類は、紙の図書とは廃棄物区分が異なるため注意が必要です。
プラスチックケースや合成樹脂製部品などが大量にある場合、紙の本と同じ処理ルートを利用できないことがあります。
CD・DVDについても、素材や状態を処理先へ伝えて確認してください。
図書の大量廃棄を業者へ依頼する際の注意点
大量の図書を処理業者へ依頼するときは、廃棄物の種類と必要な許可を確認しましょう。
図書と付属品、書架では区分が異なる可能性があります。
本や付属品の廃棄物区分を確認する
通常の学校・大学・図書館から排出される紙製の図書は、一般的には事業系一般廃棄物です。
産業廃棄物に該当する紙くずの範囲は、対象となる業種や事業活動が限定されています。
一方、事業活動から出る廃プラスチック類や金属くずは、業種を問わず産業廃棄物に該当します。
そのため、本だけなのか、プラスチック付属品や金属製書架も一緒に処分するのかによって必要な処理方法が変わります。
品目ごとに区分を確認しましょう。
業者が必要な許可を持つか確認する
処理業者へ依頼するときは、対象となる廃棄物を扱える許可があるか確認してください。
一般廃棄物と産業廃棄物では必要な許可が異なります。
産業廃棄物収集運搬業の許可を持っていても、事業系一般廃棄物を自由に収集できるわけではありません。
反対に、廃プラスチック類や金属くずなどを委託する場合は、該当する産業廃棄物を扱える許可が必要です。
複数品目をまとめて依頼する場合は、それぞれをどの区分で処理するのか確認しましょう。
冊数だけでなく搬出条件も伝える
業者へ見積もりを依頼するときは、冊数だけでなく搬出条件も伝えましょう。
大量の図書は重量があり、保管場所や建物の状況によって必要な人数や作業時間が変わります。
確認しておきたい主な内容は次のとおりです。
・おおよその冊数や重量
・段ボール梱包の有無
・保管している階数
・エレベーターの有無
・台車を使用できるか
・車両までの搬出距離
・作業できる曜日や時間
・書架など他の処分品の有無
写真や配置図も共有しておくと、見積もりの精度を高めやすくなります。
追加費用が発生する条件についても、契約前に確認しましょう。
まとめ
図書館の本を廃棄するときは、古いという理由だけで処分せず、経過年数、内容の正確性、利用状況、破損、新版の有無、保存価値などを確認しましょう。
学校図書館では受入後10年が一つの目安ですが、旅行案内書や法律書など、より短い期間で内容を見直したい図書もあります。
廃棄対象を決めたら、必要な承認と除籍を済ませ、再利用、古紙への資源化、廃棄などから適切な方法を選びます。
大学図書館では、研究資料としての価値や資産管理上の手続きにも注意が必要です。
大量に処分する場合は、品目と廃棄物区分、搬出条件を整理し、自治体や適切な許可を持つ業者へ確認してから進めましょう。
図書館の本の廃棄に関するよくある質問
図書館の本を廃棄するときに疑問になりやすい内容をまとめました。
自館の規程と照らし合わせながら確認してください。
Q.図書は何年で廃棄する?
学校図書館では、受入後10年が一つの目安です。
一方、旅行案内書や就職・受験案内書では刊行後2年、図鑑や地図帳、法律書などでは3年が内容を見直す目安として示されています。
ただし、いずれも年数を経過すれば自動的に廃棄するという意味ではありません。
内容の正確性、利用状況、保存価値などを確認し、現在も必要な資料か判断してください。
Q.図書の廃棄は毎年必要?
毎年必ず一定冊数を廃棄する必要はありません。
大切なのは、定期的に蔵書を点検し、必要に応じて廃棄・更新することです。
分野によって情報が変化する速度は異なり、利用頻度や破損状態も資料ごとに違います。
冊数を減らすこと自体を目的にせず、蔵書の質を保つために必要な更新を行いましょう。
Q.除籍と廃棄は同じ?
除籍と廃棄は異なります。
除籍は図書を蔵書管理から外す手続きで、廃棄は現物を処分する行為です。
除籍した本を他施設へ譲渡した場合は蔵書から外れますが、廃棄したことにはなりません。
基本的には、廃棄候補を選定し、必要な承認と除籍処理を済ませた後に、現物の処分方法を決めます。
Q.図書は産業廃棄物になる?
通常の学校・大学・図書館から排出される紙製の図書は、一般的には事業系一般廃棄物として扱われます。
産業廃棄物の「紙くず」は対象となる業種が限定されており、すべての事業者から出る紙が産業廃棄物になるわけではありません。
一方、プラスチック製の付属品などは産業廃棄物に該当する場合があります。
具体的な収集・処分方法は自治体によって異なるため、所在地のルールを確認してください。
Q.大量の本はどう処分する?
大量の本は、先に廃棄対象を確定して除籍し、その後「再利用」「古紙」「その他」に分けて搬出すると進めやすくなります。
選定と搬出を同時に始めると、残すべき資料まで誤って処分するおそれがあります。
業者へ依頼する場合は、冊数や重量だけでなく、保管階、エレベーター、搬出経路、書架の有無なども伝えましょう。
処分する品目ごとに廃棄物区分と業者の許可を確認することも大切です。

